食べ物をやわらかくする【凍結含侵法】について
広島県の公設試験研究機関、食品工業技術センターが開発した「凍結含侵法」は、ミキサー食や刻み食が主流であった介護食に新しい価値観「食のバリアフリー」を実現しました。
今、超高齢化を背景に急成長する「やわらか食」分野で全国的に注目されています。
酵素のちからで驚きのやわらかさ
・果物が熟すとき、自らが持つ酵素の作用によって、細胞と細胞をくっつけている物質が分解されるため、やわらかくなります。
・凍結含侵法では、さまざまな食材の中まで、酵素をしみこませるので、果物が熟すように、食材の見た目や風味そのままに舌でつぶせるほどの軟らかさを実現できるのです。
Q酵素ってなに?
A.酵素は生体内での様々な化学反応を助ける触媒の働きを持つタンパク質で、生き物ではありません。
食べても体内で消化されるので、食道や胃がやわらかくなったりはしません。
日本酒などのお酒、醤油、みそなどの発酵食品も微生物の持つ酵素の働きを利用しており、野菜ジュース、水あめや糖類の製造にも酵素が利用されています。
食品製造に使われる酵素は微生物や植物など天然由来かつ全て安全性が確認されたものです。
加熱調理では実現できない軟らかさ
■凍結含浸法で調理したタケノコ、レンコン、ゴボウは、通常の加熱調理した時の硬さと比較して、それぞれ1/50、1/10、1/5まで軟化します(右図)。
■凍結含浸法は、キザミ食やミキサー食が主流の介護食に新しい価値観「食のバリアフリー」を実現しました。普通の食事と同じ見た目のまま、食べる方の咀嚼(噛む)力に応じた軟らかさに調整でき、介護食の理想的な食形態として注目されています。
(※広島県 凍結含侵法ガイドブック第5班より引用)
さまざまな食品に適用できます
野菜、肉、魚介、キノコなど、色々な食材を自然な見た目でやわらかく(食べ易く)できます。
例)レンコン・人参・ごぼう・ブロッコリー・シイタケ・インゲン・グリーンピース・大豆・イカ・エビ・タラ・豚肉など
食材の見た目、風味や栄養を保ったまま軟化させるのが特長です。
普通の煮炊きでは実現不可能なやわらかさになり、栄養もよく残ります。
Qなんでもやわらかくなるの?
A.硬い外皮や脂肪のかたまりなどがある食材(例えばナッツなど)には、酵素液がしみこみにくいので、向かない食材です。
また、骨は酵素ではやわらかくならないので、硬いままです。
高齢者向けの食・介護食として
同じ見た目で咀嚼力に応じた食で「介護食に革命」
・病気や加齢によって、噛んだり飲み込んだりする事が難しくなると、食事は細かく刻んだり、すりつぶしたりしたものとなり、
本来の具材の形は失われてしまします。
・これでは、何を食べているのか分からず、食欲もわきにくくなります。
「見た目の美味しさ」が食べることの喜びを感じる上で、大きな要素であることは言うまでもありません。
・普通の食事と同じ、見た目の美味しさと咀嚼力に応じたやわらかさの凍結含侵介護食は、理想に近い食形態として注目されています。
Q介護食とは
A.いわゆる介護食の定義は明確ではありませんが、介護福祉の現場では、食べる方の噛んだり飲み込んだりする(咀嚼・嚥下)力に配慮して、
様々な食形態が工夫されてきました。特に近年、介護食においてもより見た目の美味しさに配慮した形態が追及されるようになっています。
食べられるを実現する
・食事を彩る多くのメニューでは、さまざまな食材が用いられます。
凍結含侵法でやわらかくした食材を用い、調理形態(味付け、食材の組み合わせ、とろみの付与など)の工夫をすることで、少し歯の弱い方から、
歯茎や舌でつぶすといった方まで、咀嚼力に応じた見た目にも美味しく食べやすい食事となります。
・摂食評価や安全試験、嗜好性調査では、特にきざみ食・極きざみ食レベルの喫食者に適していると言われています。
・凍結含浸食を食事提供している介護施設からは、入所者の食事時間が劇的に短くなった、食べ残しもなくなり栄養状態が維持された、
胃ろうから経口に戻った、という報告があります。
・食が困難になり食への意欲を失った方々の生きがい回復にもつながっていきます。